【後編】見えないテクノロジーの挑戦:『8番出口』謎解きを支える「安全・安心」への徹底したこだわり
多くの参加者が熱狂するリアル謎解きゲーム『8番出口』。その裏側では、誰もがスムーズに、そして安全に楽しめるよう、見えないテクノロジーと徹底した運営の工夫が凝らされていた。
公共交通機関という特殊な舞台で、いかにして「安全・安心」を担保したのか。リアルタイムで参加者の動きを把握する最新プラットフォームの導入から、混雑を避けるための「動く導線」の仕組み、そして安全を優先するがゆえの葛藤まで、これまで語られなかった舞台裏に迫る。
── 公共の場、特に駅という環境での大規模イベントは、安全管理が非常に重要になりますね。
角谷: はい。今回、日本全国の制作団体が加盟するポータルサイト「ESCAPE.ID」の全面協力を得て、特に特許出願中の「ESCAPE.ID GAMES」というプラットフォームを採用しました。これによって、運営側は「いつ、どの場所で、どの謎を解いているのか」という参加者一人ひとりの状況をリアルタイムで把握できたんです。
── リアルタイムでの把握が、なぜ重要だったのでしょうか?
角谷: 東京メトロは公共交通機関なので、「安全・安心」は絶対的な指針です。駅構内で人が一箇所に集中しすぎないように、実は裏側で、謎によって誘導される場所を切り替えていたんです。このプラットフォームがあるからこそ、参加者の状況に応じて動的に導線をコントロールし、自然な形で人の流れを分散させることが可能になりました。
川村: でも今回の施策で、黄色い紙袋を持って一杯の人が歩いてるっていう現象が生れていて、それを見るのも面白いよね。遊んでる人たち自体が異変になっている面白さというか。
角谷: できるだけ滞留しないような設計をした結果、流動的に人が動いて、どこにでも黄色い紙袋がある状態になったという(笑)。
── 日によっては使えない施設もあったとか。
角谷: そうなんです。施設の法定点検などで、日によって使える場所が変わることもありました。そうした場合も、このシステムを使ってスムーズに導線を変更し、体験の質を落とすことなく運営を続けられました。もちろん、ファミリーモードやチームでプレイしている方々は、はぐれたりしないように同じ場所に誘導される仕組みになっています。
参加者が「異変」になる:『8番出口』がひらく謎解き文化の未来
前代未聞のコラボレーションで社会現象を巻き起こしたリアル謎解きゲーム『8番出口』。それは、謎解きファンだけでなく、これまで馴染みのなかった多くの人々を惹きつけ、「謎解き」という文化の新たな扉を開いた。
テクノロジーと緻密な運営に支えられたこの体験は、参加者に何をもたらしたのか。そして、参加者自身が作品世界の一部となることで生まれる新しいエンターテインメントの可能性とは。プロジェクトの先に広がる未来を語り尽くす。
── 今回の謎解きは、参加者の4分の1が「謎解き初体験」だったそうですね。どうしてここまで間口を広げることができたのでしょうか?
角谷: 映画や小説といったIPの力に加えて、販売網の広さがキーになったと考えています。今回は特に「ESCAPE.ID」の協力が大きかったです。キットの引き換え場所を、自動販売機や駅の売店だけでなく、「RIDDLER」や「Tumbleweed」、「よだかのレコード」、「MRX」といった東京の有名な謎解き施設にも広げました。さらに、「アソビュー!」「じゃらん」「アクティビティジャパン」といった連携する大手レジャーアクティビティサイトまで広げることで、普段謎解きに触れない方々にも情報を届けることができました。
川村: 謎解きって、やってみたらすごく面白いのに、これまでは好きな人がクローズドなコミュニティで楽しんでいる印象が強かったんです。その面白さを外部の人に説明するのがとても難しい。でも今回は、映画や多様な販売網を通じて、「こういう遊びがあるんだ」と知ってもらう絶好の機会になりました。
── 最後に、この成功を踏まえて、今後の展望をお聞かせください。
川村: アイデアは尽きないですね(笑)。「謎解き」「脱出ゲーム」というアプローチが単なる遊びではなく、人を動かし、街を活性化させる可能性がある。次なる遊びを発明できたら嬉しいです。
映画8番出口公式サイト:
https://exit8-movie.toho.co.jp/
小説「8番出口」公式サイト:
https://www.suirinsha.co.jp/books/detail21.html
映画「8番出口」東京メトロ脱出ゲーム 公式サイト:
https://escape.id/exit8/